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新な闘い  木村朗先生によせて  

昨年の晩春、木村先生の招きで鹿児島に行き、ワンアジア財団寄付講座の1コマを担当する幸機に恵まれた。合間にご厚意で遺跡見学を案内してもらい、また地元の名物料理店でごちそうになったことが記憶に新しい。しかし、先日受け取った便りで、この生粋の九州男児が、今度定年を迎えるに際して、鹿児島を離れ、沖縄に移住することを知る。ただし、南国の海空を満喫する余生を楽しむ選択ではなく、世界平和の理想に駆られ、新たに戦う場(アジア共同体平和評議会の事務所兼住居)に沖縄を選んだ、という。


昨年、同じく定年を迎えたが、安逸を求めて人里と離れた田舎に引退した私の生き方にくらべると、雲泥万里のようである。もっとも、私は、やっかいな社会、複雑な人間集団と触れずに自分の研究を好むタイプで、いわば象牙の塔に籠城する読書人であるにすぎず、対して、政治の衝にたつ平和学ご専門の木村先生は、私の目には、最初から理想に燃える闘士の形像であった。底抜けに明るい性格とあらゆる難事も一身に引き受ける豪快な振るまいには、ひ弱い私より、何十倍、いや何百倍、何千倍のエネルギーとパワーを感じた。パワーだけではなく、その包容力も大であった。


先生と最初に関わりを持つようになったのは、2017年9月、「東アジア地域の平和・共生を沖縄から問う」研究会で、鳩山友紀夫氏の新著『脱大日本主義』の論評者として、招かれたのである。私が、石橋湛山の小日本主義の研究者であることを聞きつけたのではないかと推測する。私はかねてからこの東アジア共同体の主張の周辺に集う一団の良識ある学者、政治家たちの献身的活動に敬服し、また活動にも数回参加していたが、学問の上で、また日本近代史という研究分野の経験から、政治的共同体の機能また可能性に懐疑的であった。また、私が尊敬してやまない石橋湛山本人も、平和主義で小国主義者ではあるが、過去の協同体政治、ブロック経済に反対の立場であった。


共同体の建設を政治の理想とするこの会議に、この私は「不適格」ではないかと戸惑ってはいたが、石橋の小国主義の理論構造を紹介すれば良い、異議があれば研究者同士として議論を闘わせればよいのではないか。と先生の情熱に負け、沖縄に行く身となった。会場では、東アジア共同体論の総大将、鳩山友紀夫氏の隣に座らせられた私は、おそるおそる石橋の反「東亜協同体論」の話を紹介したが、鳩山氏は謙虚に耳を傾けられ、また非常に丁寧なコメントを頂き、会場全体からも概ね好意的に私の話を受け止められた、と思っている。たしかに、研究者として互いに意見の相違があるかもしれないが、理想の面、また政治立場の面では一致し、同じ塹壕で世界の平和を脅かし、またマイノリティのアイデンティティーを踏み潰そうとする権力側と闘う同士であることはいうまでもない。


今日の安倍政治の大害は、外交面における日米同盟、思想面における偏執的愛国主義とナショナリズムの鼓吹にあると私は思う。その政治を潰すために何らかの新方向、新方法の提言、また歴史、思想、経済面での多様な模索が必要であろう。パワーとエネルギーにあふれる木村先生は、その先鋒としての胆力があると私は信じる。ご健闘を祈る(岡山大学名誉教授、日本近代史、姜 克實)

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